(2011.10.12)武富士の更生計画案の決議に関する会長声明

1 現在,消費者金融業者大手であった更生会社株式会社武富士(以下,「武富士」という。)の会社更生手続が,東京地方裁判所において進められている。この会社更生手続は,更生管財人の提出した更生計画案によると,全国で約91万件,1兆3000億円の債権届出のある大規模かつ多額なものであり,かつ,債権者の多数を過払債権者という一般消費者が占めるという点でも,今後の実務に対する影響や社会的意義の大きい事件であると言える。
しかし,現在の武富士の会社更生手続には,以下の看過できない点がある。
2 まず,申立代理人が更生管財人に就任した点が挙げられる。
更生管財人は,その職務を公正中立に行うことが要求される。したがって,更生管財人に関しては,更生会社,債権者及びその他の利害関係者に対して,公正性・中立性を担保できる者の就任が当然の前提となるはずである。
それにもかかわらず,武富士の会社更生手続きにおいては,武富士から会社更生手続の申立ての依頼を受け,武富士の代理人となった者が武富士の更生管財人に就任している。
申立代理人たる立場は,当然に武富士の利益を図る立場である。過去とはいえ,そのような立場にあった者の提出する更生計画案ならば,債権者に過大な負担を負わせる恐れがあるものとの思いを払しょくできない。また,この先,武富士の旧役員に対する責任追及を徹底して行うことができるのかについても,甚だ疑問を感じざるを得ない。
現に,今後の更生計画に極めて重要な位置を占めるスポンサーの選定過程においても,スポンサー候補が手続の不透明さに抗議をなし,撤退するという事態を招いている。
このように,本件の更生管財人は,公正性・中立性に疑義があり,妥当性を欠くものであると言わざるを得ない。
3 次に,現在までの更生管財人の行動を見るに,更生管財人が公正性・中立性を欠くことの疑いは,払しょくされたとはいい難い点である。
現在,更生管財人提出の更生計画案に対する投票期間中であるが,この投票に関する問い合わせ先に,投票行動に中立的な立場であるはずもない「株式会社武富士本社コールセンター」が記載されている。また,この投票期間において,更生管財人は,過払債権者に対し,「更生計画案へのご賛同のお願い」なる書面を送付し,連日,武富士の従業員や更生管財人の代理人弁護士に電話をかけさせて,更生計画案に賛同をするよう働きかけている。さらに,その際に,「更生債権額の過半数の同意を獲得できなければ武富士は破産することとなり,その場合の弁済率は1.92%となる。」であるとか,「税金の還付請求や旧役員に対する損害賠償請求などにより原資を確保し,第2回弁済を実施する。」などと説明させて,賛同を求めているのである。
しかし,武富士の社債権者らが独自に提出した更生計画案では,合理的な資産処分がなされれば,清算配当率は更生計画案の弁済率である3.3%を超える可能性が指摘されている。また,第2回弁済に充てる予定だと更生管財人が説明する税金の還付や旧役員に対する損害賠償債権は,破産の際にも,当然に破産財団に組み込まれるものであり,未回収の財団がある状況下にもかかわらず算出された1.92%という数字に対する信憑性も十分でない。これは,更生管財人には,旧役員に対する責任追及をする意思がないことを明らかにしているようなものである。
4 さらに,上述の点に加え,武富士の会社更生手続においては,債権者の大多数が,過払債権者という一般消費者であることが,一番の問題となる。
一般消費者は,法律につき十分な知識を有しない素人であることが多く,会社更生の手続に関し,十分に理解をしないまま,更生管財人や武富士からの連絡を受け,更生計画案の賛否を決することが多いのである。また,過払債権者は,更生管財人が上述のような公正性・中立性に疑義のある状態であることや,清算配当率につき,更生管財人の主張する1.92%に対して疑念を挟む情報等を十分に与えられず,また,どのようにすればそのような情報と接することができるかについての情報すら与えられないまま,投票をせざるをえない状況におかれている。
武富士の会社更生手続は,このような過払債権者に対して十分な手続保障を与えないまま,申立代理人であった更生管財人の主導の元,行われているという,公正・中立を疑わせるに十分な状態でなされている。
5 武富士の更生管財人は,上述の点に留意をし,その公正性・中立性に疑義を生じさせないよう,会社更生手続を進めるべきである。また,東京地方裁判所民事第8部は,会社更生手続が公正性・中立性をもって行われるよう,運用を慎重に行うべきである。
2011年(平成23年)10月12日
岡山弁護士会
会 長  的  場  真  介

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