司法修習生に対する前期(集合)修習の実施を求める会長声明

司法修習生に対する前期(集合)修習の実施を求める会長声明

1 旧司法試験合格者(平成22年度終了,以下「旧試合格者」という。) に対しては,司法研修所入所後,2か月間の「前期(集合)修習」を実施したのち,実務修習地に配属されていた。旧試合格者は,司法試験受験勉強中は,実体法の解釈中心の勉強をしており,法律実務家としての基礎的知識を修得していないので,実務修習に入る前に司法研修所で統一的に法律実務家としての基礎的学力を修習させる必要があった。
2 ところで,司法改革の一環として法科大学院が設立され,法科大学院卒の司法試験合格者が初めて採用されたいわゆる新60期司法修習生に対して,旧試合格者と同様の「前期(集合)修習」を実施するか否かについて,最高裁の司法修習委員会で検討された。その結果,「前期(集合)修習」に相当する教育は,法科大学院に委ねることとしているので,司法研修所入所後は実務修習から開始するが,法科大学院設置当初なので,実務への導入教育の成熟途上であるから,当面,司法修習の1年間の課程の冒頭に,法科大学院における実務導入教育を補完するための教育を行なうことを相当とし,差し当たり1か月程度の統一的な実務導入教育として,新60期司法修習生に対して「導入研修」が実施された。
3 ところが,次の新61期司法修習生に対しては,上記の「導入研修」を廃止し,「導入研修」教育を行なうことなく,実務修習地に配属することとし,現在(67期)まで,司法研修所による「導入研修」は実施されていない。
この間,法科大学院において最高裁の司法修習委員会が期待する「前期(集合)修習」に相当する教育が十分に行なわれているならば,いきなり実務修習から始めてもさしたる問題はない。しかし,現実は必ずしもそうではなく,多くの法科大学院において「前期(集合)修習」に相当する実務家教育がなされておらず,実施されているとしても法科大学院によって密度に差がある状況である。
4 したがって,法律実務家教育がほとんどなされていない司法修習生を,いきなり実務修習から開始することに対する懸念があるため,司法修習生を受け入れる弁護士会において,独自に司法研修所入所前の司法試験合格者に対し,事前の導入講義等を行なう工夫をしてきたが,大規模弁護士会に限られ,中小規模弁護士会では中々実施できないし,導入講義等を実施できたとしても短期間で,しかも全司法修習生に対して等しく実施されたわけではない。
そこで,日本弁護士連合会においては,平成24年度(66期)から,全司法修習生に対し民事,刑事の課題を司法研修所入所前に配布し,実務修習開始直後に2日間にわたって導入講義を実施している。しかし,この導入講義も,旧司法試験合格者に対する「前期(集合)修習」の内容と比べれば,全く不十分と評価せざるを得ない。
5 そもそも,法科大学院は司法試験合格のための教育を行なうこと,すなわち法律科目の基礎的知識,理解,解釈を司法試験合格レベルに到達させるのが第一の目的であり,法律実務家教育を行なうことを主たる目的としている教育機関ではない。仮に,法科大学院で法律実務家教育までも行なうことを制度的に予定されていたとしても,全ての法科大学院において旧司法試験合格者に対する「前期(集合)修習」に相当する教育の実施を求めることは困難である。
したがって,法律実務家を養成する責任を持つ司法研修所は,全ての司法修習生に対して,統一的かつ実務修習をより効果的に行なうために実務修習開始前の一定期間(1〜2か月間程度),「前期(集合)修習」を実施すべきである。
6 よって,当会は,最高裁判所及び国に対して,早急に司法修習生に対して司法研修所による統一的な「前期(集合)修習」を実施することを強く求める。

2014(平成26)年1月15日

岡山弁護士会
 会長 近 藤 幸 夫

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