(2023.03.13)性的少数者に対する差別発言に強く抗議し、国に対し、性的指向及び性自認を理由とする差別を解消するための実効性ある立法を行うことを強く求める会長声明

 本年2月3日、岸田首相の元秘書官は、性的少数者につき「見るのも嫌だ。隣に住んでいたらやっぱり嫌だ」、同性婚につき「秘書官室は全員反対で、私の身の回りも反対だ」、同性婚が導入された場合「国を捨てる人、この国にいたくないと言って反対する人は結構いる」などと発言した。行政府の長である内閣総理大臣の秘書官という立場からこのような差別発言が出ることは、深刻な問題である。
 性的少数者の多くは、現在も侮蔑的発言や誹謗中傷を受け、性的指向・性自認の暴露(アウティング)に怯え、学校生活や職業生活での不利益な対応やハラスメントなどに苦しんでいる。また、法制度の不備により、結婚ができず、相続もできないなどの不利益を受けている。
 そもそも、個人の性的指向や性自認は、人の生き方そのものに関わり、個人の尊厳の根幹部分といえ、これを理由に差別をすることは決して許されない。性的少数者に対する差別的取扱いは、個人の尊重(憲法第13条)と法の下の平等(憲法第14条)に反する。
 国連人権理事会における普遍的定期的審査(2008年、2012年、2017年、2023年)においても、各国から、性自認や性的指向の差別禁止法を整備し、同性婚を認める法律を制定することなどが日本政府に対して勧告されている。また、直近の経済協力開発機構(OECD)の調査(2019年)によれば、性的少数者に関する法整備状況を比べると、日本は前回の22位から35カ国中34位と大幅に後退している。
 さらに、日本においても、2021年3月17日には、札幌地方裁判所が同性婚を認めないのは憲法第14条に違反するとの判決を下した。さらに、本年2月の共同通信社の世論調査でも同性婚導入に賛成する回答が64%を占めており、国民の多数が同性婚の導入に賛成している状況である。
 このたびの元秘書官の発言は、岸田首相の国会発言を説明する中でなされたものであり、単なる個人的見解にとどまらず、性的少数者に関する法整備に後ろ向きである日本政府内の姿勢を如実に反映したものといわざるを得ない。このような現状を改善するために、速やかに、性的指向や性自認を理由とする差別を解消するための実効性ある法律が制定されるべきである。
 以上を踏まえ、当会は、元秘書官の差別的発言に強く抗議すると共に、国に対し、性的指向及び性自認を理由とする差別を解消するための実効性ある立法を行うことを強く求める。
 また、当会は、これまでに性的少数者に関する委員会活動や会員向け研修会などを実施しているところ、今後とも、性的指向や性自認に関わらず、すべての人が平等に暮らす社会の実現に向けて取り組んでいく所存である。

 
2023年(令和5年)3月13日

岡山弁護士会     
会長 近 藤   剛

 
 


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