(2022.07.19)平成30年7月豪雨から4年を迎えての会長声明

1 はじめに
 平成30年7月豪雨災害の発生から4年を迎えた。岡山県内では、公共施設等の復旧はほとんど終了したが、令和4年7月6日時点で、10戸・24人の被災者が今なお仮設住宅で暮らし生活再建の途上にある。また、地元で住宅再建ができた被災者は元の生活を取り戻すべく、新たな地で住宅再建をした被災者は新たな生活を作り上げるべく復興の途上にある。
 当会は、被災者支援の一端を担うべく、発災直後より、無料電話相談、法律相談センターでの災害相談無料化及び被災地での出張無料相談会を実施し、被災者から約1800件の相談を受けてきた。また、当会は、平成30年7月豪雨災害における自然災害債務整理ガイドラインに係る登録支援専門家弁護士の委嘱依頼を207件受け、弁護士の推薦を行っている。災害ADR(災害に起因する紛争の和解あっせん)も実施しており、17件の申立を受けている。
 昨年11月、当会では、災害時における自治体との連携強化のために「災害時における法律相談に関する協定」を岡山県内全ての市町村と締結した。また、当会が呼びかけ会となり本年1月に法律、福祉及び技術の分野をまたぐ7つの士業団体が参加する岡山県被災者支援士業連絡協議会を発足させた。
 当会は、上記の被災者支援活動を通じて、①不動産における相続登記の未了が公費解体の妨げになるなど復興の障害になったこと、②平成30年7月豪雨災害において、高齢者等の避難における支援が必要となる方(以下「避難行動要支援者」という。)の被害が多かったこと、③公費解体を含めた災害廃棄物処理が復興の始まりとして重要であることを痛感したことから、岡山県及び岡山県内各市町村に対し、以下の要望を行うものである。

2 不動産の相続登記未了問題解消の推進
 当会は、平成30年7月豪雨災害発災直後より現在まで被災地において法律相談を継続する中で、「相続登記が未了であるため公費解体ができない。」、「隣の空家が災害時のままで困っている。登記をとってみたが亡くなっている方の名義のままのようで、相続された方と対応を話し合うことすらできていない。」など、相続登記が行われていないことに関する相談が多数寄せられた(詳しくは「平成30年7月豪雨 無料法律相談 相談データ集計及び分析結果」参照。)。
 令和3年4月に相続登記の義務化を内容とする不動産登記法の改正が為されたが(令和6年4月1日施行)、現状では、市民に相続登記の義務化や、相続登記の重要性が周知されているとはいい難い。
 当会は、市民に公的情報を周知するのは自治体の責務であることから、岡山県内の自治体に対し、平時は空き家問題の解消、災害時には被災地の復興に役立つものとして、積極的に相続登記の必要性や義務化されたことを周知することを要望する。また、平成30年7月豪雨災害で被害の大きかった倉敷市や総社市に対しては、相続登記が未了であったことにより公費解体業務等に支障が出たことを全国の自治体に周知することを要望する。

3 避難行動要支援者個別避難計画の作成
 平成30年7月豪雨災害において、倉敷市真備町では被災により亡くなられた方の約8割が70歳以上の高齢者となっており、亡くなられた方に占める高齢者の割合が非常に高い。これに関し、岡山県内全ての自治体が、避難に支援が必要な高齢者や障がい者を災害前に把握しておく避難行動要支援者名簿を作成していることは評価できる。
 ただ、避難行動要支援者の名簿を作成しただけで、実際にどのように避難を支援するか決まっていないのであれば、名簿を作った意味が半減する。岡山県内では避難行動要支援者個別避難計画(以下「個別避難計画」という。)の作成を終えている市町村は、2つの市町にとどまっており、全国の市町村でも約8%しか個別避難計画の作成を終えている市町村はない(令和4年1月消防庁調べ)。
 このような状況を踏まえ、災害時の避難支援等を実効性のあるものとするために、令和3年に災害対策基本法が改正され、個別避難計画の作成が市町村に努力義務化された(同法第49条の14)。内閣府による令和3年度個別避難計画作成モデル事業が行われ岡山市も対象となるなど、個別避難計画の作成を推進する取り組みは見られる。
 しかし、個別避難計画の作成を終えている市町村は、岡山県内では2つの市町しかないという現状を考えると、個々の自治体の取り組みだけでは解消することのできない問題、例えばノウハウや人的資源の問題も存在するものと思われる。そこで、岡山県が中心となり、研修の実施だけにとどまらず、作成が完了した市町のノウハウを未作成の市町村が習得できるよう、計画作成のための人材を県から市町村に派遣したり、市町村がNPO団体など外部組織の専門的かつ継続的な支援を受けられるよう補助金を設立したりするなど、市町村による個別避難計画の作成に岡山県が直接関与する支援が必要であると考える。特に、岡山県においては平成30年7月豪雨災害を経験している各市町村の社会福祉協議会やNPO団体等が多く存在している強みを活かして、全国に先駆けて早急な個別避難計画の作成をすべきである。近年、全国各地で、毎年豪雨災害が発生していることを考えると、時間的な猶予はない。
 当会は、岡山県内の個別避難計画作成未了の市町村に対してハザードマップ等で災害発生の可能性が高いとされる地域の個別避難計画の作成を本年度中に完了することを求め、岡山県に対して各市町村の個別避難計画の作成に直接関与する支援を要望する。

4 岡山県内の全市町村における災害廃棄物処理計画の策定
 都道府県に対しては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律において、災害廃棄物処理計画を策定することが義務付けられているが(同法第5条の5第2項第5号)、市町村については策定が義務付けられていない。
 しかし、災害廃棄物を処理することは復興への最初の第一歩であるため、市町村は災害廃棄物処理計画を策定しておくべきと考える。一言に災害廃棄物の処理といっても、災害救助法に基づく処理や廃棄物処理法に基づく処理など様々な法令を根拠に行われており、実際に作業をする自衛隊、民間業者やボランティアの協力を得るなど連携も必要になることから、災害前から綿密な計画を立てておく必要がある。
 当会は、昨年11月の中国地方弁護士大会において、「公費解体の適切な実施と災害廃棄物処理計画の策定を求めるとともに、自費での解体を行った被災者を救済する条例制定を求める決議」を提案し、採択されたところである。
 平成30年7月豪雨災害前、岡山県内の多くの市町村は、災害廃棄物処理計画を策定していなかった。この豪雨の経験から災害廃棄物処理計画の必要性が理解され、現在では23の市町が災害廃棄物処理計画を策定しているが、4つの市町村(1市1町2村)においては未策定である。
 当会は、災害廃棄物処理計画が未策定の4つの市町村に対し、早期の災害廃棄物処理計画の策定を要望する。また、岡山県に対しては、4つの市町村が早期に災害廃棄物処理計画の策定ができるよう支援することを要望する。

5 おわりに
 上記の相続登記は弁護士、司法書士、土地家屋調査士及び不動産鑑定士など多くの士業が関わる分野であり、円滑に推進するためには自治体と士業の連携が必要となる。また、上記の個別避難計画の作成には、どこにどのように避難するのが安全かという技術的な視点のみならず、避難行動要支援者の生活状況などを適切に把握するために福祉的な視点も必要であり、個人情報が含まれる個別避難計画についてそれを管理するためには法的な視点も必要となってくる。そこで、自治体が、相続登記の推進や個別避難計画の作成において、技術・福祉・法律の士業団体で構成される岡山県被災者支援士業連絡協議会との連携を図っていくことが重要と考える。
 最後に、当会は、上記の3点を岡山県及び県内各市町村に要望するとともに、平成30年7月豪雨災害の被災者支援について倉敷市真備町での無料法律相談会を継続して行うことを中心に一人ひとりの被災状況や生活状況に応じて必要な支援を行う災害ケースマネジメントを実践し、昨年度構築できた自治体及び他の士業団体との連携体制をより一層強化することで、岡山県を災害に強く早期に災害からの復興が実現できる地域にするべく活動していくことを平成30年7月豪雨災害から4年を迎えてあらたに決意する。

以上

 
2022年(令和4年)7月19日

岡山弁護士会     
会長 近 藤   剛

 
 


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