「共謀罪」と実質的に変わらない,いわゆる「テロ等準備罪」を創設する 組織犯罪処罰法改正法案の国会提出に反対する会長声明

「共謀罪」と実質的に変わらない,いわゆる「テロ等準備罪」を創設する
組織犯罪処罰法改正法案の国会提出に反対する会長声明

1 当会では,昨年だけでも1月,11月と,二度にわたり,いわゆる「共謀罪」を内容とする法案の国会提出に反対する声明を発表しているが,現在の国会での議論状況及び報道を踏まえ,過去に3回も廃案になった「共謀罪」と実質的に変わらないいわゆる「テロ等準備罪」を創設する組織的犯罪処罰法改正法案を国会に提出することに強く反対する。
2 政府が本国会に提出しようとしている新法案(以下,「提出予定新法案」という。)の内容は,報道によれば,犯罪主体を組織的犯罪集団に限定した上で,特定の犯罪実現の計画に加え,準備行為を要件としているという。そして,政府はこれらの変更点から,提出予定新法案を従来の「共謀罪」とは全く異なるテロ対策のための法案であるとしてきた。
しかし,組織的犯罪集団の定義は曖昧であり,捜査機関の恣意的な解釈によって通常の市民団体や労働組合等が組織的犯罪集団と認定される危険性を孕んでいることから,主体がテロ組織等に限定されているとは言い難い。政府もテロ等準備罪について,「一般の方々がその対象になることはあり得ない」としながら,「団体の性質が一変することはある」と述べるなどその態度は一貫しておらず,テロ等準備罪が通常の市民団体や労働組合等に適用されるおそれは払拭されていない。
また,「計画」及び「準備行為」についても,何をもって「計画」がなされたと判断するのか基準が明確になっていない上に,「準備行為」も現行法上の予備罪における予備行為以前の危険性の乏しい行為を含むものであり,政府や捜査機関などの恣意的な運用により思想・信条の自由はもちろん,表現の自由,集会・結社の自由等の憲法上保障された基本的人権を侵害する危険性が含まれていることは平成28年11月9日発表の当会会長声明において述べたとおりである。
3 政府はこれまで,国連越境組織犯罪防止条約(以下,「条約」という。)締結のためにいわゆる「共謀罪」を創設する必要があるとしており,そのためには,条約において「4年以上の懲役・禁固の刑が定められている罪」について共謀罪を創設することが求められている以上,対象犯罪を減らすことはできないとの見解を示していた。それにもかかわらず,今回,何ら合理的な理由を示すことなく対象犯罪を600超から277にまで絞り込んだことは,政府の過去の説明と矛盾する。これは,従前の法案の内容でなければ条約を批准できないという政府の説明が誤りであること,及び条約の批准のために新たにテロ等準備罪を創設する必要のないことの証左である。
4 また,我が国の国内法においては,爆発物取締罰則,化学兵器禁止法,サリン防止法,航空機強取処罰法,銃砲刀剣類所持等取締法など,未遂以前の共謀や予備の段階からの処罰が可能となっており,しかも,これらについて講学上の共謀共同正犯も認められる以上,テロ対策のために新たにテロ等準備罪を創設する必要はない。
加えて,我が国は,テロ対策のために制定されたテロ防止関連諸条約(13本)を締結している。これらの条約は,一定のテロリズム行為を国内法上の犯罪として,その犯人の処罰,引渡し等を行うことを定めることで,犯人を処罰しうる国際的な体制を取るものであり,国際的なテロリズムの行為の防止に関する国際協力の強化に資するものである。
これらの条約締結に際して,我が国は必要な国内法を整備しており,2002年に国連のテロ資金供与防止条約を締結した際には,国内法としてテロ資金提供処罰法(公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律)を制定し,公衆等脅迫目的の犯罪を実行しようとする者を援助する目的で資金等を提供する準備行為についても処罰の対象としている。
このように,我が国のテロ対策は十分に法的整備がなされており,国民の基本的人権を侵害する危険を冒してまで,新たに広範なテロ等準備罪を創設する必要はない。
5 このようにテロ等準備罪は,政府や捜査機関の恣意的な運用によって憲法の保障する思想・信条の自由,表現の自由,集会・結社の自由などの基本的人権に対する重大な脅威となるばかりか,その制定の必要性に乏しいものであることから,当会は,いわゆるテロ等準備罪を創設する組織的犯罪処罰法改正法案を国会に提出することに強く反対する。

2017年(平成29)年3月8日

岡山弁護士会
会長 水 田 美由紀

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