(2026.09.10)死刑執行に関する会長声明

 2026年8月21日、大阪拘置所において、死刑確定者1名に対する死刑が執行された。平口洋法務大臣就任後、初の執行であった。
 すべての人は基本的人権を有しており、その最も根幹は生きる権利である。憲法13条は個人の幸福追求の源となる生命に対する権利について最大限尊重するよう定めている。死刑は、このような基本的人権の核をなす生命そのものを剥奪する刑罰である。
 刑罰に係る判断は人間がする以上、誤判の可能性は排除しきれない。この誤判には、無罪の者を有罪とするえん罪のみならず、無期刑が相当である者に対し、誤って死刑を宣告するなど、量刑上の誤判も存在する。ひとたび執行されてしまえば、事後的に権利回復を図ることは不可能であり、誤判は絶対に回避しなければならない。この問題は、袴田事件において再審が開始されて死刑判決が覆り、2024年10月9日に無罪判決が確定したことで、改めて浮き彫りになった。
 死刑制度には、犯罪抑止効があるとの声もあるが、死刑が他の刑罰と比較して犯罪をより強く抑止することについて、確立した科学的知見があるとはいえず、死刑制度を一般予防の見地から正当化することは困難である。
 国際社会に目を向けると、死刑制度廃止が趨勢となっている。近年、法律上及び事実上の死刑制度廃止国は3分の2以上に上り、先進国グループとされるOECD(経済協力開発機構)加盟国(38か国)に限れば、国家レベルでの死刑存置国は日本のみである。
 加えて、2023年1月31日、国連人権理事会の作業部会において、日本の人権状況に関する普遍的定期的審査が行われ、日本に関する勧告で最も多く挙げられた課題が死刑執行であった。日本政府は、死刑制度の廃止については世論を根拠に受け入れない旨を表明しているが、国連の自由権規約委員会からは、世論の動向にかかわりなく、死刑の廃止を積極的に検討するよう勧告を受けている。
 日本国内においても、2024年11月13日、有識者からなる「日本の死刑制度について考える懇話会」は報告書を取りまとめ、「現行の日本の死刑制度とその現在の運用の在り方は、放置することの許されない数多くの問題を伴っており、現状のままに存続させてはならない」と指摘し、「早急に、国会及び内閣の下に死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体を設置することを提言する」としている。
 日本弁護士連合会は、2016年開催の第59回人権擁護大会で、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、国に対し死刑制度の廃止と刑罰制度全体の改革を求めた。また、中国地方弁護士会連合会においても、2019年開催の中国地方弁護士大会で、「死刑制度の廃止を求める決議」を採択した。
 当会においても2023年、死刑廃止に関する総会決議を採択し、その中で、政府及び国会に対し、死刑廃止と矛盾しない犯罪被害者やその遺族に対する支援の拡充を求めるとともに、死刑廃止、代替刑創設に向けた議論を早期に開始し、死刑制度の廃止までの間、死刑の執行を停止することを求めていた。
 当会としては、以上のことを踏まえ、今回の死刑執行に対しても改めて強く抗議するとともに、全ての死刑の執行を直ちに停止し、死刑制度を廃止する等の立法措置を早急に講じることを求める。

 
2026年(令和8年)9月10日

岡山弁護士会     
会長 佐々木 基 彰

 


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