(2023.05.18)いわゆる谷間世代への一律給付実現を改めて求める会長声明

 2011年(平成23年)の裁判所法改正により、司法修習生に対する給費が廃止され、同年採用の司法修習生以降、月額23万円を標準とする修習資金相当額を貸与する制度(貸与制)が導入された。このような中で、新65期司法修習生以降は、無給での司法修習を強いられた。
 その後、当会を含む各単位会、日弁連、当事者団体であるビギナーズ・ネットなどの活動により、2017年(平成29年)4月19日、裁判所法が改正され、71期司法修習生以降は、改正裁判所法67条の2に基づき、基本給付金として13万5000円、さらに必要に応じて住宅給付金(上限3万5000円)及び移転給付金が支給されることとなった。
 ところが、2011年(平成23年)から2016年(平成28年)の間に司法修習生として採用された者(いわゆる「谷間世代」)について改正裁判所法に言及がなく、制度の谷間に取り残されることとなった。
 上記2017年(平成29年)の裁判所法改正を受けて、当会は、2017年(平成29年)5月10日、「修習給付金を支給すること等を内容とする改正裁判所法の成立にあたっての会長声明」を発出し、残された課題として、2010年(平成22年)以前の司法修習生及び修習給付金を受けることとなった71期以降の司法修習生と前記谷間世代の司法修習生とを比較すると著しい不公平が生じており、これを解消することが必要不可欠と指摘していた。
 その後、当会は、谷間世代の不公平の問題に対し、岡山選出の国会議員に対する議員要請などの活動を続け、この問題解決に向けて取り組んできた。そして、2023年(令和5年)3月、谷間世代問題解決のための国会議員による賛同メッセージが全国会議員の過半数を超えた(岡山選出の国会議員10名中5名から賛同メッセージを獲得済み)。なお、4月26日時点で、国会議員709名中の371人から賛同メッセージを得ている。
 2023年(令和5年)年3月7日、衆議院第一議員会館において日弁連主催で「谷間世代の法曹への一律給付の実現に向けた院内意見交換会」が開催された。同意見交換会では、ビギナーズ・ネットからの活動報告として谷間世代の弁護士が貸与金の返済に不安を抱えつつ、人の役に立ちたいという想いから公益的な活動に取り組んでいることが報告され、出席した国会議員からも谷間世代の法曹への一律給付を実現するために議連を作るなどの具体的な動きに入るべきとの声が挙がった。
 司法は、三権分立の一翼として、国民の権利を救済する重要な社会インフラであり、法曹はこうした公共的使命を負っていることから、国は、日本国憲法施行後、将来の法曹を育成することを国の責務と捉え、司法修習生に対し、修習専念義務(兼業の禁止)を課しながら、一定の給与を支給してきた。
 2011年(平成23年)、国は法曹の負っている公共的使命や司法修習生が修習専念義務等の各種義務を負っていることは何ら変わらないまま、裁判所法を改正し、給与を廃止し、貸与制とした。この裁判所法改正は、国の責務を放棄するものであり、誤りであったと言わざるを得ない。そして、貸与制の導入が誤りであったからこそ僅か6年という短期間に再び法改正を行い、一部ではあるが、司法修習生に対する経済的施策を導入したのである。
 そうだとすれば、かかる制度の谷間において司法修習を行ったものは単に貸与制下で司法修習を行わざるを得なかったという一事のみで、他の司法修習生と異なり、司法修習に際し、給費或いは修習給付金が得られておらず、これは、先の会長声明で述べたとおり、谷間世代の問題は法曹間における不公正・不公平の問題であり、不公正、不公平の是正のために谷間世代への一律給付が必要不可欠である。
 以上のとおり、当会は、改めて、国による谷間世代への新給付金相当額又はこれを上回る金額の一律給付が実現することを強く求める。 

 
2023年(令和5年)5月18日

岡山弁護士会     
会長 竹 内 俊 一

 


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