(2022.06.13)核兵器禁止条約への署名及び批准を求める会長声明

 「核兵器禁止条約」(以下「本条約」という。)は、国際社会における核兵器の非人道性に対する認識の広がりや核軍縮の停滞などを背景に、2017年7月7日、投票参加国の多くの賛成により採択された。同条約は、2017年9月20日から各国による署名が開始され、2020年10月24日、批准国の数が条約の発効要件である50か国・地域に達し、90日後の2021年1月22日に発効した。本条約の批准国の数は、その後も増え続けており、2022年5月18日時点で61か国・地域に達している。
 本条約は、核兵器の開発、実験、保有、使用、使用の威嚇などの活動を全面的に禁止(1条)するほか、定められた期限までに国際機関の検証を受けて核兵器を廃棄する義務を果たすことを前提に、核保有国も条約に加盟できること(4条)を規定しており、将来的な核兵器の完全禁止を目指すものである。また、本条約は、前文で被爆者の苦しみと被害に触れ、核兵器廃絶のために被爆者が行ってきた努力にも言及しており、唯一の戦争被爆国であるわが国にとっても、本条約の精神は重要な意義を持つものといえる。
 核兵器は、ひとたび使用されれば、いかなる通常兵器をも遙かにしのぐ広範囲に多大な破壊をもたらし、極めて多数の人命を奪う究極の非人道兵器である。核攻撃を生き残ることができたとしても、被爆者は長期にわたる放射線障害に苦しめられ、後には飛散した放射性物質によって広範囲に汚染された土地が残されることとなる。核兵器の使用がもたらす人類の生命・健康及び自然環境に対する悪影響は計り知れず、万一全面核戦争に至れば、文明社会、ひいては人類そのものの存亡にかかわる危機となる。
 2022年2月24日以降、国際法に反してウクライナに侵攻したロシア連邦のプーチン大統領は、侵攻に際し、核兵器を運用する部隊に特別態勢を取ることを命じた旨を発表するなど、国際社会に対し、核兵器の使用を示唆する威嚇を行っている。
 核兵器という究極の非人道兵器が決して使用されることのないようにするためには、核兵器そのものを禁止して地上からなくすしかないところ、核兵器の全面的な禁止をめざす本条約の発効は、それに向けた最初の大きな一歩といえる。本条約の批准国が61か国・地域もの多数にのぼることも、一刻も早く核兵器を廃絶すべきという国際社会の強い願いを反映したものである。
 しかるに、日本政府は、現在のところ、わが国の防衛のためには核兵器を有する米国の抑止力を維持することが必要であるとして、本条約に加盟しない意向を示している。さらに、今次のロシア連邦によるウクライナ侵攻を契機として、いわゆる「核共有論」や「非核三原則」の一つである「持ち込ませず」を緩和すべきだとする見解が強く主張されるなど、わが国における核兵器の配備や、さらには使用につながりかねない動きさえ、一部に見られるところである。
 核兵器使用の現実的リスクが高まりつつある現在の国際状況であればこそ、唯一の戦争被爆国であり、被爆者らによる長年月にわたる真摯な訴えを通じて、核兵器のもたらす惨禍がいかなるものであるかを知るわが国には、核兵器の禁止に向けて主導的役割を果たすことが強く求められている。
 当会は、わが国が唯一の戦争被爆国であることを踏まえ、また、今次のロシア連邦によるウクライナ侵攻を契機として、核戦争の危険が改めてクローズアップされた現状を憂慮し、核兵器禁止条約第1回締約国会議開催に当たり、日本政府に対し、核兵器禁止条約に早期に署名・批准することを求めるとともに、少なくとも同会議にオブザーバーとして参加することを強く要請するものである。

以上

 

2022年(令和4年)6月13日

岡山弁護士会     
会長 近 藤   剛

 
 


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