(2021.10.18)成年年齢引き下げによる消費者被害を防止するための実効性ある施策の実現を求める会長声明

 民法の成年年齢を20歳から18歳に引下げる「民法の一部を改正する法律」(平成30年法律第59号。以下「本法律」という。)が2018年(平成30年)6月13日に成立し、施行日である2022年(令和4年)4月1日まで、残り6か月を切った。
 未成年から成人になると、消費者トラブルに巻き込まれやすくなるところ、本法律により成年年齢が引下げられることにより、18歳、19歳の若者は未成年者取消権を失い、若年者の間で消費者被害が拡大することが指摘されてきた。
 そこで、本法律の成立に際しては、参議院法務委員会において、①知識、経験、判断力の不足などを利用して勧誘し契約締結させた場合における消費者の取消権(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)を創設することを含め、若年者の消費者被害の防止・救済のための必要な法整備を行うこと(法成立後2年以内)(附帯決議一号)、②消費者被害の拡大が懸念されるマルチ商法等による被害の実態に即した対策について検討し必要な措置を講ずること(同三号)、③消費者教育を質量共に充実させること(同四号)、④18歳、19歳の若年者への理解されやすい形での周知徹底(同六号)や⑤成年年齢引き下げに伴う若年消費者被害防止の社会的周知のための国民キャンペーン実施を検討すること(同七号)、⑥施行日までにこれらの措置の実施、効果、国民への浸透について調査・検討し、その状況を随時公表すること(十号)などを求める附帯決議がなされた。
 このように、本法律の成立にあたって、若年者の消費者被害の拡大のおそれを解決する施策の実現、その施策の効果が十分に発揮されることが必要とされてきた。
 しかし、本法律成立から3年以上が経過した現時点においても、上記附帯決議記載の措置は十分に実現されていない。例えば、つけ込み型不当勧誘取消権を始めとした消費者被害拡大防止のための制度は創設されていない。国民に対しても、成年年齢引下げの事実を伝えるにとどまり、若年者への消費者被害拡大のおそれについて十分に周知されているとは言えない。
 また、2018年(平成30年)4月から2020年(令和2年)3月まで実施された「若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラム」も国民に十分浸透したとはいえず、2021年(令和3年)4月から実施されている「成年年齢引下げに伴う消費者教育全力キャンペーン」についても同様の結果となることが懸念される。
 よって、当会は、国に対し、成年年齢引下げによって若年者が被る影響や問題点を国民に広く周知し、上記附帯決議に示された消費者被害を防止するために必要な実効性のある施策の早期実現を強く求める。

 

2021年(令和3年)10月18日

岡山弁護士会     
会長 則 武   透

 
 


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