(2020.01.15)死刑執行に関する会長声明

 2019(令和元)年12月26日,福岡拘置所において,1名の死刑確定者に対して,死刑が執行された。
 2019(令和元)年10月の就任以降,森雅子法務大臣による初の執行であり,第2次以降の安倍内閣において,死刑の執行は17回目で,執行人数は合わせて39名にのぼる。
 死刑は基本的人権の核をなす生命を剥奪する刑罰である。人間が判断する以上,誤判・えん罪の可能性は常に存在するところ,死刑については,誤判によって生命が侵害された場合,失われた生命を取り返すことはできず,権利回復を図ることは不可能である。我が国では,4件の死刑確定事件において再審無罪が確定しており,えん罪による死刑執行という,死刑制度がはらむ問題が現実のものとなっている。
 国際社会においては,死刑廃止が趨勢となっている。近年,法律上及び事実上の死刑廃止国は3分の2以上に上っており,OECD(経済協力開発機構)加盟国に限れば,死刑制度存置国は日本,韓国及び米国のみであるが,韓国は20年以上にわたって死刑の執行を停止し,米国では19州が死刑を廃止し,4州が死刑モラトリアムを宣言している。我が国は,国連人権(自由権)規約委員会や国連人権理事会等の国際機関からも,死刑の執行を停止し,死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告等を受けているが,これらを無視して死刑執行を続けている。
 日本弁護士連合会は,2016(平成28)年10月7日開催の第59回人権擁護大会で,「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択した。この宣言は,日本において国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)が開催される2020(令和2)年までに死刑制度を廃止し,それと共に,死刑が科されてきたような凶悪犯罪に対する代替刑の導入を検討すること等を国に対して求めたものである。
 また,中国地方弁護士会連合会は,2019(令和元)年11月1日開催の中国地方弁護士大会において,「死刑制度の廃止を求める決議」を採択した。この決議も,日本弁護士連合会の上記宣言に引き続き,死刑の執行を直ちに停止し,速やかに死刑制度を廃止することを求めたものである。
 死刑は基本的人権の核をなす生命を剥奪する刑罰であり,国家による重大かつ深刻な人権侵害であって,国際社会の潮流に反し,死刑の執行が続いている状況は極めて遺憾である。
 当会は,これまでの死刑執行に対しても繰り返し抗議してきたところであるが,今回の死刑執行に対して改めて強く抗議するとともに,全ての死刑の執行を直ちに停止し,死刑制度の廃止を求めるものである。

2020(令和2)年1月15日

岡山弁護士会     
会長 小 林 裕 彦

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