(2022.01.13)死刑執行に関する会長声明

 2021(令和3)年12月21日,東京拘置所及び大阪拘置所において,3名の死刑確定者に対して,死刑が執行された。
 2021(令和3)年10月の岸田内閣発足以降,古川禎久法務大臣による初の執行であった。
 死刑は基本的人権の核をなす生命を剥奪する刑罰である。人間が判断する以上,誤判・えん罪の可能性は常に存在するところ,死刑については,誤判によって生命が侵害された場合,失われた生命を取り返すことはできず,権利回復を図ることは不可能である。我が国では,4件の死刑確定事件において再審無罪が確定しており,えん罪による死刑執行という,死刑制度がはらむ問題が現実のものとなっている。
 国際社会においては,死刑廃止が趨勢となっている。近年,法律上及び事実上の死刑廃止国は3分の2以上に上り,OECD(経済協力開発機構)加盟国(38か国)に限れば,死刑制度存置国は日本,韓国及び米国のみである。
 加えて,韓国は20年以上にわたって死刑の執行を停止している事実上の死刑廃止国であり,米国でも,バイデン大統領は,大統領選の選挙公約の中で死刑廃止を明記し,2021(令和3)年7月1日,ガーランド司法長官は,連邦レベルでの死刑執行を一時的に停止するとの方針を明らかにしている。
 そして,2020(令和2)年11月,国連総会第三委員会(人権)では,8回目となる死刑廃止を視野に入れたモラトリアム(死刑執行の停止)を求める決議案が賛成多数で可決され,これまで毎回棄権票に投じてきた韓国は,今回,決議案に賛成票を投じている。このように死刑制度廃止は国際的な潮流といえる。
 日本弁護士連合会は,2016(平成28)年10月7日開催の第59回人権擁護大会で,「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,中国地方弁護士会連合会においても,2019(令和元)年11月1日開催の中国地方弁護士大会で,「死刑制度の廃止を求める決議」を採択した。これら宣言,決議は,死刑の執行を直ちに停止し,速やかに死刑制度を廃止することを求めたものである。
 死刑は既に述べたとおり,基本的人権の核をなす生命を剥奪する刑罰であり,国家による重大かつ深刻な人権侵害であって,国際社会の潮流に反し,死刑の執行が続いている状況は極めて遺憾である。
 当会は,これまでの死刑執行に対しても繰り返し抗議してきたところであるが,今回の死刑執行に対して改めて強く抗議するとともに,全ての死刑の執行を直ちに停止し,死刑制度の廃止を求めるものである。

以上

 

2022年(令和4年)1月13日

岡山弁護士会     
会長 則 武   透

 
 


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