(2021.04.23)出入国管理及び難民認定法改正案に反対する会長声明

1 政府は、本年2月19日、出入国管理及び難民認定法改正案(以下「本改正案」という。)を国会に提出した。
 本改正案は、①難民申請者に対する送還停止の効力の一部解除、②収容に代わる監理措置制度の創設、③送還に応じなかった者に対する刑事罰を含む退去命令制度の創設など多くの問題を含んだものであり、本改正案に反対である。

2 本改正案は、3回以上の難民認定申請者等について、原則として送還を停止する効力を解除するとしている。しかし、難民認定手続の適正化に向けた法整備や具体的措置をまず先行させるべきであり、そのような手当てもないまま送還停止効を一部解除する本改正案はノン・ルフールマン原則(迫害を受けるおそれのある国への追放・送還を禁じる国際法上の原則)に違反するおそれがあることから、反対である。

3 収容に代わる監理措置は、収容の長期化を防止しつつ収容しない者を適切に管理・援助する制度とされ、監理人には支援者や弁護士などが予定されている。しかし、監理人は、対象者の生活状況、許可条件の遵守状況を監督し、その状況を国に届け出る義務を負い、これに反すれば罰則を科せられ得ることになる点に大きな問題がある。本来、対象者を支援しようとする者に監理人としてかかる届出義務を課すことは、両者の信頼関係を損なわせ、特に代理人として対象者の利益を守り、守秘義務を負う弁護士の立場とは相容れず、対象者の人道的支援や権利擁護活動に支障をきたすおそれがある。

4 退去強制令書の発布を受けた者に対する退去命令を発して、これに従わないときは刑事罰を科する制度の創設については、対象となる者を一定の者に限定したものの、刑罰をもって強制することの必要性及び要件の明確性を欠き、さらに外国人にも保障されなければならない裁判を受ける権利を侵害するものであるから削除されるべきである。

5 当会が本年2月12日付会長声明でも求めたとおり、長期収容問題の解決のためには、収容の要否や期間について厳格な要件と手続を法律で定め、行政による恣意的な運用を抑制することが不可欠であるところ、これを欠く本改正案は、本改正案提出の契機となった2019年(令和元年)6月に発生した被収容者の餓死事件の再発防止及び長期収容問題の解決という目的を到底達成できるものではない。
 当会は、本改正案につき、抜本的な見直しを行うことないしは直ちに廃案とすることを求める。

 

2021年(令和3年)4月23日

岡山弁護士会     
会長 則 武   透

 
 


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