(2020.04.03)東京高等検察庁検事長の勤務延長に関する閣議決定に強く抗議すると共に 国公法及び検察庁法改正案に反対する会長声明

1 2020年1月31日,政府は,検察官について国家公務員法(以下「国公法」という。)81条の3の勤務延長制度の適用対象から外すとしてきた従来の解釈を変更し,検察官についても国公法の定年制度を前提とする勤務延長制度の適用があるとした上で,定年退官が予定されていた東京高等検察庁検事長の任期を,「東京高等検察庁管内で遂行している重大かつ複雑困難事件の捜査・公判に引き続き対応させるため」との理由によって,本年8月7日まで延長する閣議決定を行った。

2 しかし,三権分立を定める日本国憲法のもとで,司法権の一翼を担う検察官には公訴権を独占させるなどの強力な権限が認められている。ときには,国会議員や大臣を起訴すべき場合もあり,その職務には政治的な中立性と独立性が求められている(準司法官)。
 このような「職務と責任の特殊性」に基づき,検察官については,定年,特例定年,勤務の延長及び再任用の制度の適用は除外されるとしてきた。つまり,検察官の定年を定めた検察庁法22条は,一般法である国公法81条の2及び同法81条の3第1項の特別法であり,同条項が検察官に適用される余地はない。
 また,今般の閣議決定のように,検察官に国公法の勤務延長の適用を行えば,政府が,検察官の人事のあり方に延長の可否という形で関わることが可能となり,検察官の職務の政治的な中立性と独立性が損なわれる危険が生じる。
 すなわち,時の政府の意向に従う検察官の定年を延長する等,検察官の勤務延長が恣意的に運用されるならば,かかる危険性は火を見るよりも明らかである。
 そもそも,検察官を国公法の勤務延長制度の対象外とすることは,前記のような合理的理由のもと法制度として定着してきたのである。にもかかわらず,長年定着してきた法制度を法改正によることなく内閣の解釈によって変更することは,解釈の限界を超えており,憲法の定める三権分立に反する。
 さらには,閣議決定によって「重大かつ複雑困難事件の捜査・公判」への対応を理由に検察官の勤務を延長することは,法務大臣による検察官の事務に関する指揮監督を一般的なものに限定し,個々の事件の取調又は処分については,検事総長のみを指揮することができるとすることによって,行政府の干渉を排除し,検察官の職務の公正を確保しようとした検察庁法14条の趣旨にも反する。

3 その後,本年3月13日,以上の閣議決定による解釈変更に対する批判を受け,政府は国会に国公法及び検察庁法改正案を提出した。その内容は,検事長ら役職者の勤務延長を内閣の判断に委ねるなど,政府が堂々と検察官人事に介入することを認める内容となっている。
 しかし,これは前記の閣議決定と同様,検察官の独立性・政治的中立性を損なうものであり,到底,許されるものではない。

4 よって,当会は,今回の東京高等検察庁検事長の勤務延長の閣議決定に強く抗議するとともに,国公法及び検察庁法改正案にも強く反対するものである。

 

2020(令和2)年4月3日

岡山弁護士会       
会 長  猪 木 健 二

 
 
 

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