(2026.02.19)国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護費用の抜本的改善を求める会長声明

 令和7年7月、「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」の取りまとめ報告書が作成された。同報告書によれば、国選弁護制度に関し、近年85%を超える被疑者が捜査段階において国選弁護人選任請求を行い、ほぼ全ての事件において24時間以内に国選弁護人が指名されていること等に触れられ、現在まで円滑な運用が継続している旨の報告がなされている。
 当会においても、国選弁護制度が被疑者・被告人の権利擁護のために憲法上の要請を受けた制度であるという認識の下、国選弁護制度では対応できていない逮捕段階の弁護活動を担う当番弁護士制度を運営し、また、全国に先駆けて岡山県社会福祉士会との協定を締結する等して刑事分野における司法・福祉連携「岡山モデル」を創設したうえで、罪に問われた障がい者等の刑事弁護費用等の援助制度等を設ける等、市民が過度な費用負担を心配することなく、高度な刑事弁護活動の恩恵を享受できる体制を目指して注力してきた。
 しかし、そもそも、憲法上無罪推定の原則が保障されており、憲法において罪に問われた障がい者等の公正な刑事裁判を受ける権利(憲法第32条、第37条第1項)が保障されている以上、これらの諸措置は、本来国費によるべきものである。
 今後、「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」で取り上げられた多岐に亘る新たな刑事弁護活動を含めて、必要な刑事弁護活動にかかる費用が国費で賄われることを前提に、これを支える確固とした予算措置の議論が必要不可欠である。
 そして、かかる議論の中で、現行の国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護費用が極めて不十分であることの抜本的な解決も図られるべきである。
 すなわち、国選弁護事件の平均的な報酬は、捜査・公判段階共に事務所経営を維持しながら適正な弁護活動を行うために必要な対価としては非常に低額な状態が続いている。少なくとも、起訴後の接見については接見回数に応じた手当てがまったくなされておらず、明らかに不合理な状態にある。
 当会の実情としても、会員の大多数が事務所を構えている県南地域から津山市等の県北地域に所在する警察署等への遠距離接見を伴う事件が相当程度存在する他、大量の記録等を検討しなければならない否認事件、頻繁な接見が必要となる事件等、現状の国選弁護報酬を前提とすれば、到底、その負担に見合わないものと考えられる事件も多くみられる。実際、当会における被疑者国選及び当番弁護士名簿の名簿登載者数は減少傾向にある。
 また、近時、佐賀県警察科学捜査研究所の職員によるDNA鑑定で不正行為が発覚したが、捜査機関側において作成された鑑定書の信用性を争うべき事案は決して稀ではなく、数々の冤罪事件でも弁護側による科学的鑑定資料が無罪主張の柱となってきた。しかし、現行の国選弁護費用体系では、当事者鑑定の費用をはじめ、本来実施されてしかるべき多くの鑑定費用等が賄われず、刑事裁判における真実発見が困難な状況となっている。
 今般、袴田事件、福井女子中学生殺人事件と、相次いで再審無罪判決が出され、再審請求事件ではないものの、プレサンス事件、大川原化工機事件等、著名なものだけをみても冤罪事件は跡を絶たない。そのような状況下においては、改めて刑事弁護活動の重要性が認識されているものといえる。
 そもそも、国選弁護業務のための予算は160億円前後と極めて僅少な額で推移している。膨張を続ける100兆円規模の国家予算に占める割合も年々低下しており、人権保障の経済的基盤の拡充は立ち遅れているという他ない。
 よって、当会は、被疑者・被告人の更なる権利擁護と公正な刑事司法制度実現のため、国会、法務省、財務省等に対し、国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護費用の抜本的改善を求める。

以上

 
2026年(令和8年)2月19日

岡山弁護士会     
会長 土 居 幸 徳

 


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