(2026.02.13)佐賀県警察科学捜査研究所職員によるDNA型鑑定における不正行為を強く非難するとともに、第三者機関による徹底的な調査及び検証を強く求める会長声明

 2025年(令和7年)9月8日、佐賀県警察科学捜査研究所に所属する技術職員が、 7年余りにわたってDNA型鑑定で虚偽の書類を作成するなどの不正行為(以下「本件不正行為」という。)を行っていたことが明らかとなった。不正の主な内容は、鑑定をしていないのに実施したように偽装したものが9件、鑑定後に資料を紛失し、本来のものと異なる資料を返却したものが4件とのことである。
 DNA型鑑定は異同識別の科学的手法であり、捜査及び公判において被疑者・被告人と犯人の同一性を立証するための極めて有力な証拠となり得るものといえる。DNA型鑑定が適正に実施されることは、無実の者の誤判を防ぐとともに、真犯人を特定して適正な処罰を実現するためにも不可欠である。
 当初佐賀県警察は、この技術職員が担当した632件のDNA型鑑定のうち、不正行為が確認されたのが130件であり、うち16件の鑑定結果が証拠として検察庁に送られていたものの、捜査・公判への影響はなかったと説明していた。
 しかし、その後同年11月27日に公表された警察庁の特別監察の中間報告(以下「特別監察中間報告」という。)では、上記130件のうち鑑定結果が検察庁に送致されたと認められたのは25件であったとされ、検察庁への送致件数という本件不正行為の調査及び検証の前提となる事項について、佐賀県警察が誤って把握・公表していたこととなる。
 さらに、特別監察中間報告は、犯人性立証の証拠として、本件不正行為が行われたDNA型鑑定のほかには 自供及び引き当たりしかない事案であっても、本件不正行為による捜査への影響はなかったと結論づけている。
 しかし、過去の冤罪事件の多くでは誤った証拠に起因して虚偽自白がなされているのであるから、DNA型鑑定以外に自供があるから捜査への影響がなかった旨の特別監察の判断は、過去の冤罪事件に対する原因究明・検証が不十分であるといわざるをえない。また、元被疑者・被告人や弁護人に対する確認を行っていないこと等を踏まえると、警察庁による特別監察においても、所詮、警察組織内の手続に過ぎず、第三者性・公平性・中立性を欠いた不十分なものといわざるをえず、失墜した社会的信頼の回復と、徹底した原因究明及び再発防止を行うことは到底できない。
 佐賀県議会も、同年10月2日、「発覚後の情報公開においても初動から丁寧さを欠き不十分であったことは、極めて深刻であり、警察組織の透明性と信頼性を大きく損なうものである。」と批判し、「全国の警察組織や科学捜査全般の信頼を損ない、警察職員の士気阻喪にも波及しかねない事態」と指摘した上で、本件不正行為について「独立性、透明性、専門性などを備えた第三者による調査を行うこと」などを求める決議を全会一致で採択した。
 以上を踏まえ、当会は、本件不正行為を強く非難するとともに、佐賀県警察、警察庁及び国家公安委員会に対し、本件不正行為について、元被疑者・被告人及び弁護人ら関係者への情報提供等を行うこと、警察組織から独立した第三者機関による、徹底的な調査及び原因の究明と、再発防止策の策定及び実施を強く求めるものである。

以上

 
2026年(令和8年)2月13日

岡山弁護士会     
会長 土 居 幸 徳

 


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