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朝鮮学校に対する適正な補助金交付を求める会長声明
2016.06.08
朝鮮学校に対する適正な補助金交付を求める会長声明
 
1 文部科学省は,2016(平成28)年3月29日,朝鮮学校が所在する28都道府県に対し,「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について(通知)」(以下,「本通知」という。)を通知した。本通知は,各都道府県知事に対して,「朝鮮学校に関しては,我が国政府としては,北朝鮮と密接な関係を有する団体である朝鮮総聯が,その教育を重要視し,教育内容,人事及び財政に影響を及ぼしているものと認識して」いるとした上で,各地方公共団体に対して,「朝鮮学校の運営に係る上記のような特性も考慮の上,朝鮮学校に通う子供に与える影響にも十分に配慮しつつ,朝鮮学校に係る補助金の公益性,教育振興上の効果等に関する十分な御検討とともに,補助金の趣旨・目的に沿った適正かつ透明性のある執行の確保」を求めている。
 本通知に先立つ自由民主党の「北朝鮮による弾道ミサイル発射に対する緊急党声明」では,「対北朝鮮措置に関する要請」13項目の制裁強化策を速やかに実施するよう求めているところ,同要請第7項が「朝鮮学校へ補助金を支出している地方公共団体に対し,公益性の有無を厳しく指摘し,全面停止を強く指導・助言すること」とされていること,現に本通知を受けて補助金の交付停止を検討・決定する地方公共団体も出てきていることに鑑みれば,本通知は,政府が外交的な理由から各地方公共団体に対し,朝鮮学校に対する補助金交付を停止するよう求めたものと評価せざるを得ない。
2  そもそも,朝鮮学校に対する補助金の支給は,朝鮮学校に在籍する生徒が憲法第26条第1項,子どもの権利に関する条約第30条,国際人権規約A規約(「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)」)第13条などにより保障されている学習権を実質的に保障するために行われている措置である。大阪高判平成26年7月8日(判例時報2232号34頁等参照)では,朝鮮学校は,「民族教育を軸に据えた学校教育を実施する場として既に社会的評価が形成されている」学校であると認定しているが,それは,外国人も自らの社会的背景にある文化,歴史などを学習する権利があること及びその権利は社会的に評価されていることを認めたものに他ならない。
 それにもかかわらず,朝鮮学校に在籍する生徒とは無関係な外交問題・政治問題を理由として朝鮮学校への補助金を停止することは,憲法第14条,国際人権A規約,国際人権B規約(「市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)」),人種差別撤廃条約(「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する条約」)及び子どもの権利条約が禁止する不当な差別に該当する。
 また,本通知やそれに続く補助金の不交付,交付の留保は,朝鮮学校に通う子どもたちに社会からの疎外感を与えるとともに,朝鮮学校の子どもたちへの不当な差別を助長する可能性が高く,この点からも到底容認することができない。
3 2014(平成26)年8月28日に採択された国連人種差別撤廃委員会による「日本の第7回・第8回・第9回定期報告に関する最終見解」においても,地方公共団体による朝鮮学校に対する補助金の停止あるいは継続的な縮小を含む,在日朝鮮人の子供の教育を受ける権利を妨げる政府の行動について懸念が指摘されているところである。さらに,上記最終見解でも指摘されているとおり,我が国ではとりわけ韓国・朝鮮人に対して人種的ヘイトスピーチが広がっている現状がある。このような状況下において,本通知のように差別を助長する可能性のある措置は厳に慎むべきである。
4 子どもたちは人類の未来を担う存在であり,その学習権を保障することは,子どもたちが一個の人格として成長・発達するために重要である。その対象として,朝鮮学校に通う子どもたちも例外ではない。
5 当会は,以上の理由から,文部科学省に対し,本通知を速やかに撤回することを求める。また,岡山県をはじめとする各都道府県に対し,憲法及び各種条約に違反する本通知に拘束されることなく,朝鮮学校に対する補助金について,停止または縮小することなく交付することを強く求めるものである。
 
2016(平成28)年6月8日
                        岡山弁護士会     
                         会長 水 田 美由紀
 
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