死刑執行に関する会長声明

死刑執行に関する会長声明

2017年(平成29年)7月13日、大阪拘置所及び広島拘置所において、それぞれ1名の死刑確定者に対して、死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。
にもかかわらず、またしても死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が141か国に上っているのに対し、死刑存置国は57か国に過ぎない。我が国は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けている。
日本弁護士連合会は、2015年(平成27年)12月9日には法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
また、2016年(平成28年)10月7日に福井市で開催された第59回人権擁護大会で、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであること、死刑を廃止するに際して死刑が科されてきたような凶悪犯罪に対する代替刑を検討すること等を国に対して求めた。
なお、同宣言では、我が国が、国連自由権規約委員会や国連拷問禁止委員会等の国際機関から、これまでに死刑判決の全員一致制、死刑判決に対する自動上訴制、死刑判決を求める検察官上訴の禁止等の慎重な司法手続が保障されていないことについて幾度となく改善を勧告されているにもかかわらず、今日まで見るべき改善がなされていないことも指摘されているが、今回、広島拘置所において死刑が執行された者は、2013年(平成25年)2月に岡山地方裁判所における裁判員裁判で死刑判決を受け、その後、控訴したが、同人が控訴を取り下げたことにより上訴審において量刑に関して十分な審理がなされないまま死刑判決が確定した者であり、今回の死刑執行はかかる国際機関による勧告も考慮することなく行われたと言わざるを得ない。
当会においても昨年9月にシンポジウムを開催し、死刑制度についての議論を深める企画を行ったところである。
このような国際社会の潮流に反し、また、当会や日本弁護士連合会の要請等に反し死刑の執行が続いていることは極めて遺憾である。
そこで、当会は、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、死刑の執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきことを要請するものである。

2017年(平成29年)7月19日

岡山弁護士会
会長 大 土   弘

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