生活保護基準の更なる引下げを行わないよう強く求める会長声明

生活保護基準の更なる引下げを行わないよう強く求める会長声明

政府は,2017年(平成29年)12月22日,社会保障審議会生活保護基準部会が同月14日に示した報告書を基に,生活保護費のうち食費や光熱水費に充てる生活扶助の基準を,最大5%引下げ,年間160億円削減する内容を含む平成30年度予算案を閣議決定し,2018年(平成30年)2月28日,衆議院を通過した。
これまでにも,2004年(平成16年)からの老齢加算の段階的廃止,2013年(平成25年)からの生活扶助基準の引下げ(平均6.5%,最大10%),2015年(平成27年)からの住宅扶助基準・冬季加算の引下げと,連続して生活保護基準の引下げがなされている。この度の生活保護基準の更なる引下げは,特に,子どものいる世帯と高齢世帯の生活に深刻な影響を生じさせる。
今回の引下げの根拠は,生活保護基準を第1・十分位層(所得階層を10に分けた下位10%の階層)の消費水準に合わせるというものである。
しかし,厚生労働省が公表した資料によっても,日本では,生活保護の捕捉率(生活保護を利用する資格のある人のうち実際に利用している人が占める割合)が2割ないし3割程度と推測されている。すなわち,第1・十分位層の中には,自らが生活保護を受給できるにもかかわらず,これを利用できずに生活保護基準を下回る生活を余儀なくされている人たちが多数存在している。この層を比較対象とすれば,生活保護基準引下げが際限なく続くことになり,合理性がないものといわざるを得ない。実際に,第1・十分位層の単身高齢世帯の消費水準が低すぎることについて,生活保護基準部会においても複数の委員が問題として指摘している。さらに,上記報告書も,子どもの健全育成のための費用が確保されないおそれがあること,一般低所得世帯との均衡のみで生活保護基準を捉えていると絶対的な水準を割ってしまう懸念があることに注意を促しているところである。
そもそも生活保護基準は,憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の基準であり,最低賃金,就学援助の給付対象基準,各種社会保険制度の保険料や一部負担金の減免基準,地方税の非課税基準等の労働・教育・福祉・税制などの多様な施策の適用基準と連動している。生活保護基準の引下げは,生活保護利用世帯の生存権を直接脅かすとともに,生活保護を利用していない市民生活全般にも多大な影響を及ぼすものである。
岡山県は,故・朝日茂氏が「朝日訴訟(人間裁判)」を提起し,その後の生活保護基準の改善や社会保障制度の発展に大きく貢献した地でもあり,当会は,2012年(平成24年)11月21日に「生活保護基準の切り下げに反対する会長声明」を発し,2015年(平成27年)6月10日にも「生活保護の住宅扶助基準,冬季加算の引下げに反対する会長声明」を発したところである。これらの引下げに引き続いて行われる,このたびの更なる引下げは到底容認できるものではない。よって,当会は,政府及び国会に対し,生活保護基準の更なる引下げをしないよう強く求めるものである。

2018年(平成30年)3月14日

岡山弁護士会
会長 大 土   弘

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