(2019.08.09)死刑執行に関する会長声明

 2019年(令和元年)8月2日,東京拘置所及び福岡拘置所において各1名の死刑確定者に対して,死刑が執行された。
 第二次安倍内閣以降としては16回目,合計38名,2018年(平成30年)10月に山下貴司法務大臣が就任してから2回目の執行がなされたことになる。
 今回死刑が執行された者の中には,少なくとも1名は再審請求中であることが明らかとなっており,法務大臣は,再審事由があるとして再審請求を行っている者に対して,裁判所の判断を待つことなく死刑執行を命じたことになる。
 国際社会においては,死刑廃止が趨勢となっている。最近では,死刑を廃止し又は死刑の執行を事実上停止している国が142か国に上っているのに対し,死刑存置国は56か国であり,先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国(36か国)に限れば,死刑制度存置国は日本,韓国及び米国のみ(ただし,韓国は事実上の廃止国)である。我が国は,国連人権(自由権)規約委員会や国連人権理事会等の国際機関からも,死刑の執行を停止し,死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告等を受けているが,これらを無視して死刑執行を続けている。
 日本弁護士連合会は,2016年(平成28年)10月7日開催の第59回人権擁護大会で,「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択した。この宣言は,日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度を廃止し,それと共に,死刑が科されてきたような凶悪犯罪に対する代替刑の導入を検討すること等を国に対して求めたものである。
 言うまでもなく,死刑は基本的人権の核をなす生命を剥奪する刑罰であり,国家による重大かつ深刻な人権侵害であって,前記のような国際社会の潮流に反し,死刑の執行が続いていることは極めて遺憾である。
 当会は,これまでの死刑執行に対しても繰り返し抗議してきたところであるが,今回の死刑執行に対して改めて強く抗議するとともに,死刑の執行を停止し,2020年(令和2年)までに死刑制度の廃止を求めるものである。

2019年(令和元年)8月9日

岡山弁護士会      
会長  小 林 裕 彦

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2019-08-09 | Posted in 意見表明・お知らせComments Closed